講談『赤穂義士伝』によく出てくる言い回し。激闘の比喩。たとえば『銘々伝』の『赤垣源蔵徳利の別れ』より。
赤穂義士・赤垣源蔵は討ち入り当日夕刻、芝汐留にいる実兄(源蔵は養子に出たので姓は異なる)の塩山伊左衛門を訪ねて別れを告げようとしたが、生憎伊左衛門は雪の中にもかかわらず所用で外出していて会えない。西国のさる大名家に仕官することになったから当分会えない、と下女に伝言を依頼して、源蔵は仕方なく立ち去る。帰宅した伊左衛門は、伝言を聞き不審に思うが、その夜はそのまま床につく。ところがいっぽう、吉良邸では弟が「鎬を削り鍔を割って必死の働き」。虫の知らせか、伊左衛門は寝ようとしても寝つかれない。
